生前贈与がある場合

【事例】

父親が死亡し、相続人として子供2人(太郎さんと次郎さん)がいます。

父親の遺産は、自宅の土地と建物、預金があり、父親は「財産のすべてを太郎に相続させる」との遺言書を残していました。

上記遺産の具体的な内容は、自宅の土地と建物で、3000万円相当、預金が1000万円あった場合で、父親が死亡する3年前に相続人ではない自分の母親に500万円の贈与をし、死亡する半年前に相続人ではない自分の弟に1000万円を贈与していました。

この場合、次郎さんは、遺留分減殺請求権を行使できるのでしょうか。

 

【回答】

1 生前贈与とは

今回の事例では、父親が生前に相続人や相続人でない第三者に贈与することをいいます。

 

2 生前贈与と遺留分との関係

(1)遺留分は、法律上取得することを保障されている相続財産の一定の割合であるため、生前贈与や遺言によっても、原則として侵害されることはありません。

(2)生前贈与は、遺留分の算定の基礎となる財産に含まれるものとそうでないものがあるので注意が必要です。

次に挙げるものは、遺留分の算定の基礎となる財産に含まれます。

①相続開始前の1年以内にした贈与

②贈与をした人ともらった人双方が遺留分を侵害することを知ってした贈与

③相続人に対して婚姻・養子縁組のため、もしくは生計の資本としてされた贈与

※②と③の贈与については、期間制限はありません。何年前のものであっても遺留分の基礎財産に組み込まれます。

(特別受益については、2-14問題8で説明します)

 

3 次郎さんの遺留分減殺請求権の行使

(1)次郎さんの遺留分

今回、相続人は子供2人なので、遺留分は1/2、次郎さんの個別の法定相続分は1/2なので、次郎さんの遺留分は1/4となります。

 

(2)遺留分算定の基礎となる財産

まず、父親が相続開始時に有していた財産の価額は、3000万円+1000万円=4000万円です。

そして、父親は死亡する1年以内である、半年前に贈与しているため、弟への贈与1000万円も加えることになります(死亡の日から遡って1年以内の贈与は、誰に対するものであっても算定の基礎財産に含まれます)。

 

つぎに、父親が死亡する3年前に母親にした500万円の贈与が遺留分の算定の基礎となる財産となるか、が問題になります。

死亡した日から遡って1年以上の贈与である場合には、当事者双方が遺留分を侵害することを知ってなされる必要があります。

今回の事例では、母親に贈与した時点では、父親には、5000万円相当の財産があったことになります。すると、この時点では、母親への贈与が次郎さんの遺留分を侵害することはないため、「当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたとき」には該当しません。したがって、母親への贈与500万円は遺留分の算定の基礎となる財産にはなりません。

よって、本事例での遺留分の算定となる財産は、5000万円相当となり、5000万円×1/4=1250万円が次郎さんの請求できる金額となります。

 

 

次は、特別受益がある場合についてみていきます。生前贈与の一部でもあるので、あわせてみていきましょう。