不動産がある場合3 共有物分割まで行く場合

【事例】

父親が死亡し、相続人として子供2人(太郎さんと次郎さん)がいます。

父親の遺産は、自宅の土地と建物、預貯金があり、父親は「財産のすべてを太郎に相続させる」との遺言書を残していました。

そのため、次郎さんは、太郎さんに対して、遺留分減殺請求権を行使しました。

どのような場合に、遺留分権利者である次郎さんは、共有物の分割までしなければいけないのでしょうか。

 

【回答】

遺留分減殺請求権の行使の流れ

1 遺留分減殺請求権の行使

次郎さんは、遺留分として1/2×1/2=1/4が認められています(詳しくは、2-3遺留分の計算方法をご確認ください)。

それにもかかわらず、太郎さんが父親の遺産をすべて相続するため、次郎さんは、太郎さんに対し、父親の財産の各4分の1を限度として、遺留分減殺請求権を行使することができます(具体的な請求方法については、2-4の請求の方法をご確認ください。)。

 

2 現物返還の原則

現物返還が原則であるため、次郎さんが遺留分減殺請求をすると、原則として、土地、建物の共有持分として各4分の1、預貯金の4分の1を取得することになります。

遺留分権利者に、遺留分減殺対象財産の選択権を否定する立場が通説となっており、次郎さんが預金のみ又は不動産のみの取得を希望していたとしても、それはできないと考えられているからです。

ただし、協議をして、太郎さんと次郎さんが合意をすれば、どのような分け方でも遺産を分配することができます。

 

3 金銭での支払い

ここで遺留分権利者である次郎さんが、太郎さんからすべて金銭で支払ってほしいと考えていた場合、どのような手段をとればいいでしょうか。

 

法律上、遺留分を金銭で支払ってほしいという請求を、遺留分権利者の方から遺贈を受けた人に対してすることはできません。

そのため、遺贈を受けた人が、金銭を支払うことで不動産の共有となることを避け、不動産を確保したいと考え、価額弁償権の行使をしなければ、遺留分権利者から不動産の共有に代わり、金銭の支払いを求めることはできません。

4 遺贈を受けた人が価額弁償権を行使しない場合

遺贈を受けた人が、不動産の共有ではなく、金銭で払う旨の意思表示をしてくれない場合、遺留分権利者としては金銭の請求をすることができません。

したがって、本件であれば、次郎さんは、土地と建物の1/4の移転登記を求めることしか出来ません。

次郎さんは、土地と建物の共有持分4分の1を取得できますが、太郎さんと共有状態であるため、なかなか売却も難しいと考えられます。

 

5 共有物分割

そこで、次郎さんが共有持分を金銭に変えるためには、太郎さんに対して、共有物分割請求の調停または訴訟を裁判所に提起し、共有関係の解消を求めることになります。

共有物分割については、現物分割、価格賠償による分割、競売による分割という方法があり、裁判所はこの順番で可能な分割方法を検討していきます。すなわち、まず現物を分割を検討し、それができない場合にはどちらかが残りを金銭を支払って買い取る方法、それもできない場合には競売により金銭に変えてそれを分けるという方法になります。

具体的には、不動産の現物の分割をすることができないときとは、物理的に分割することが不可能な場合だけでなく、社会通念上適正な現物分割をすることが著しく困難な場合も含まれます。したがって、自宅に使用している不動産の共有関係の解消の場合などには、現物分割ができない場合にあたります。

そのような場合には、どちらかが金銭を支払い残りの持分をすべて買い取るか、それだけの金銭を支払えない場合には競売にかけ、競売で売れた場合、その代金を分けるという方法になります。

 

このように共有関係の解消は複雑な手続きを取らざるをえず、解決までに大きな労力がかかることが予想されますので、ご検討の場合には、一度弁護士にご相談されることをお勧めします。